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マイペース数学者のブログ

大阪在住数学者のブログです。どうしても、数学関連のことがメインになると思います。

数学研究は1人でする?みんなでする?

数学の研究は伝統的に1人ですることが主流だったし、多くの人もそのようなイメージを持っていると思う。机に向かって計算をしたり、1人で考え込んだり。

科学研究全般では、複数人の研究者が共同で研究を行い論文を書くことがどんどん増えているようだ。特に実験系の学問で、その健康は顕著で、大規模実験になると1つの論文の共著者が100人以上になることもあるみたい。実験装置に関わる技術的なことを1人でこなせるわけもなく、そうなることも仕方の無いことだろう。しかし、科学の醍醐味である、頭を使って良いアイデアを出すという部分のウェイトが研究の中でどんどん下がって、代わりに実験装置の整備などに多くの時間と労力を取られるのは、残念でもある。

数学でも共同研究の割合はどんどん増えているけれど、その一方で1人で行われる研究もまだまだ多い。僕自身については、論文のうち3/4ぐらいは単著だ。代数幾何(僕の研究分野)の最近のEプリント(出版前の論文をいち早くウェブ上に公開したもの)を眺めてみると、単著と共著の割合は1対1ぐらいだった。

数学でも共同研究が増えている理由には、大規模な理論が増えていることと、数学全体が成長して分野が細分化していることがあるだろう。もはや、数学全体を理解する人はとっくにいなくなっているし、比較的近い分野でも分からないことが多い。自分が勉強することは、少なくとも自分の論文で使う定理については、証明を全て理解していないといけないと言われていた時代もあったようだが、そんなことはもはや不可能になっている。(もちろん、何事にも例外があり、超人的な人や、日の浅い分野、初等的(重要でないというわけではない)な内容を扱う分野などは当てはまらないこともあるだろう。)そこで、得意分野の異なる人が集まることで、各人が苦手な部分をみんなでカバーすれば、扱える理論も増えて、証明できる定理も増えるというのは、その通りだと思う。

僕も、最近幾つかの共同研究の中で、自分が不得手な事を共同研究者に教えてもらったり、自分には出来ないような計算をしてもらったりという経験をした。逆に、自分が教えることもあった。こういう経験はとても貴重であり、共同研究は良い物だなと思う。その一方で、共同研究にはリスクもあると思う。つまり、安易な研究をやりがちになってしまうかもということ。この理論とあの理論を使えばこんなことが示せるだろうという、多くの専門家が考えそうなことを、いち早くチームを組んで解いた方が勝ちみたいなことになりがちなんじゃないかと。

まあ、単独の研究と共同研究のどちらが良いかは、研究者の性格(内向的か外向的か、協調的かなど)や研究テーマ(やはり、目標がはっきりしているけれど、複数人の知識を寄せ集める必要があることがはっきりしていれば、共同研究がよいだろう)にも依るでしょう。自分は、共同研究で他の人の違った視点に刺激を受けるのを楽しみつつ、単独研究で好き勝手にじっくり考えるのも大事にしていきたいなあ。