マイペース数学者のブログ

大阪在住数学者のブログです。どうしても、数学関連のことがメインになると思います。

Edward Frenkel, "Love & Math"

Edward Frenkelの"Love & Math"という本を読み終わった。ソ連出身のUC Berkeley教授が書いたこの本は、彼の人生と数学の魅力とともにラングランズ対応という現在の数論の主要テーマを一般の読者(非数学者)向けに説明するという、野心的な内容だった。

まず、モスクワ大学の入試でのユダヤ人差別のエピソードが凄い。ロシアは凄い数学者をたくさん生み出しているけれど、ロシア数学界の一端が垣間見られて興味深い。数学の説明も分かりやすく工夫して書かれていたように思う。自分は数学者なので、そうでない人にどれぐらい分かりやすいかは定かで無いが、上手く書けていると思う。

ラングランズ対応と言っても、著者は物理への興味が強いようで、物理に現れる超対称性(?)との関係を中心に書いていた。しかし、どうしてロシア人は物理と抽象的な代数幾何・数論幾何などを結びつけるのがこんなに特異なんだろうか。不思議だ。自分は学部時代に物理から脱落して、数学に専念する形になってしまったけど、またいつか物理をちゃんと勉強してみたい。

本を読み終わって思い出したけど、著者は僕の専門でもある特異点をジェット・スキームを使って調べる研究の先駆けとなった予想「局所完全交差代数多様体$X$が有理特異点を持つ$\Leftrightarrow$全て自然数$n$に対し$n$次ジェット・スキーム$X_n$が既約」(Mustaţǎの定理)をEisenbudとともに提出した人だった。数学の世界は狭い。