マイペース数学者のブログ

大阪在住数学者のブログです。どうしても、数学関連のことがメインになると思います。

Manin予想とMalle予想

ドイツに来て初のブログ更新。その間すでに1ヶ月半が過ぎた。最初はいろいろと落ち着かなかったけど、だんだんと必要な物が揃ってきて生活も落ち着いてきた。落ち着いてしまうとあんまり景色を楽しんだりはしなくなるけど、ここボンは程よいサイズの綺麗な街です。滞在中のマックス・プランク研究所はボンの街の本当にど真ん中にある。研究所周辺の写真は撮ってないけれど、街の雰囲気を伝えるために写真を2つ貼っておく。

ボンのライン川の両岸を往復するフェリーから

研究所の近くにある広場で週末に家族で過ごした

意外だったのは研究所にほとんど日本人がいないこと。僕ともう一人物理学者がいるだけのようだ。例年はもう少し日本人がいるように聞いていたけれど、これも日本の大学教員がどんどん忙しくなってきている表れかもしれない。そんな中、こちらに来られている自分は恵まれているので、ぜひとも研究面で良い成果を上げたいと思う。他の研究所のメンバーで自分と興味の近い人も何人かわかったので、今後いろいろと議論していこう。

自分の研究に関しては、最近まで論文執筆に集中していた。数体上のMcKay対応について以前論文に書いたアイデアをもう少し掘り下げようと思いドイツに来る少し前から色々考えていたことを、こちらに来てから書き始めた。論文タイトルは「Manin's conjecture vs. Malle's conjecture(Manin予想 vs. Malle予想)」にした。ここに出てくるManinさんはかなり有名な数学者でマックス・プランク研究所のメンバーで、もう80歳近いがまだまだ精力的に活動していて論文も書いている。論文をメールで送ったら次の日にすぐ会って話を聞いてくれ、示唆に富んだコメントをくれたので、この研究所に来たかいがあった。

一つ理解が進むと、どんどん新しい問題が出てくるもので、なかなかこの数論的McKay対応から離れられそうにない。そろそろ全く別の問題に取り組もうかとも思っていたけれど、せっかく研究所やヨーロッパの比較的近い場所に興味を共有できそうな人がたくさんいるので、とことんこの方面を掘り下げるのも悪くない気がしてきた。




Manin予想
Diophantus問題に関する予想。Manin(以下敬称略)に80年代後半に提唱された。Diophantus問題とは方程式の整数解や有理数解を考える問題のこと。一般には与えられた方程式に整数解や有理数解が存在するかどうかを決定するのはとても難しい問題で、整数解についてはそれを決定するアルゴリズムが存在しないことが知られている(Hilbertの第10問題の否定的解決。Davis, Matiyasevich, Putnam, Robinsonの結果。)しかし、方程式の複素数解が定める図形(空間)の幾何学的性質によっては、整数解や有理数解の様子がある程度理解できる可能性がある。Manin予想は図形がFano多様体という比較的単純な構造のものになる場合に関するもので、この場合、有理数解は無限(でも可算)にあることがことが多い。そこで各解の「高さ」という値を定めると、高さが実数$B$以下の解の個数が有限になるようにできる。その個数を$N(B)$とすると変数$B$の増加関数が得られる。$B$をどんどん大きくしていったときの$N(B)$がどれぐらいの早さで大きくなるかという増大度を予想したのがManin予想。

ちなみにManin予想の対極にあるのが、Faltingsの定理(Mordell予想)やLang予想と呼ばれるもので、複素数会の作る図形が「一般型」というものになる場合だ。この場合、有理数解は有限個か図形のごく一部にしかないと期待される。ちなみにFaltingsはマックス・プランク研究所の所長。よく見かけるが気後れしてしまい、まだ話したことはない。


Malle予想
整数論で最も基本的な対象の一つが有理数全体の集合で通常$\mathbb{Q}$と太字のQで表す。有理数は四則演算(加減乗除)で閉じているので体(たい)であるという。例えば整数全体の集合は割り算で閉じていないので体ではない。さらに、この$\mathbb{Q}$を理解するためにも、$\mathbb{Q}$にいくつかの代数的数(1変数有理数係数方程式の解になる数)を付け足してできる体(付け足した数や有理数から四則演算で得られる数もすべて加える)も調べる必要がある。このような体を数体という。例えば
$$
\mathbb{Q}(i) =\{ a + bi \mid a,\,b \in \mathbb{Q} \} \subset \mathbb{C}
$$
は数体。Malle予想は数体がどれぐらいあるかに関する予想。といっても無限個あるので、Manin予想の場合と同じ方法で「数える」。数体の次数、(Galois閉包の)Galois群を固定し、判別式という値がある値$B$以下のものの数を$N(B)$とし、増加関数$N(B)$の増大度がどれくらいかを予想するのがMalle予想。
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